第二話


「…え?な、なにこれ…」

右手に刻まれた十字から、不思議な事に血が流れてこない。
ただ、もうひとつ。

「あれ?そんな腕輪つけてた?」
「腕輪?」

左の袖を捲ると、確かに金色に光る腕輪があった。

「…まさか…blood-cutが…!?」
「…え…!?」

「お客様にチェチック様。チェチック様いらっしゃられますか?」
「あ、私です」

ウエイトレスが電話機を渡している。
…誰からだろう…?

「はい、………あ、……はい…はい……はい……ええ!?…あ、はい…分かりました…」

受話器を置き、リリースが待つ席に戻る。

「なに?誰から?」
「…Dr.リトル先生からで…腕輪がつけられたか?…って。…で、今すぐ来いっ
て…」
「え!?」

私は勘定を支払い、店を出た。

「リリース、Dr.リトル先生の研究所ってどこだっけ?」
「確かリオラ薬屋の隣」

私たちはDr.リトル先生の研究所に向かった。
Dr.リトル先生の研究所の前に、Dr.リトル先生はいた。

「おおー、待っていたよ、モニカ君、リリース。ささ、入りなさい」

Dr.リトル先生に言われ、私たちは研究所に入り、不器用な椅子に腰掛けた。

「…で、なんで先生がこの腕輪のことを…?」
「ああ、そのことだがな。これを見てみなさい」

そう言いながら先生は分厚い本を次々にめくっている。

「おお、あったあった。これだよ。」

先生が指した物は、一人の女性だった。

「…これは?」
「リオン=チグリス=チェチック王妃、百年前のパリスの王妃だ。」
「リオン=チグリス=チェチック…!?」

「ああ。モニカ君。君の御先祖様だ。」

私の…御先祖様…!?
…え?じゃあ、私は、

「リトル先生!!じゃあモニカは…」
「ああ、列記としたパリスの王女だ。そしてその腕輪、"パリスの腕輪"は王女認
証の証だ。」

この…腕輪が…証…。
そして私が、パリスの王女?

私は…何も聞かされてない…